2013年度事業方針

2013年4月1日。その前日を以て京都議定書の第一約束期間が終わり、次の約束期間に参加することを拒んだ日本はこの日から、温室効果ガスの削減目標も新しい実行計画も持たない事実上の漂流状態に陥りました。

また、一昨年3月11日の福島第1原発事故を受けて昨年、大規模に実施された「エネルギー・環境に関する選択肢」についての「国民的熟議」の結果、圧倒的多数の意思として示された脱原発の結論は当時の政府で閣議決定に至らず、さらにその後の政権交代によりゼロベースで見直されようとしています。原発依存に復帰する可能性が高いこの「見直し」の理由に地球温暖化対策が挙げられていることは黙過できない重大な問題です。

他方、前述「熟議」でも示されたとおり、原発存続の是非を含めエネルギー問題についての関心はかつてなく広がっており、電力不足への対応に加え電気料金が値上げされることもあって、節電や省エネへの国民意識は高まっています。

地球温暖化対策や原発政策で政府の腰は据わらなくても、市民運動の観点から見れば絶好のチャンスが訪れているのであり、このチャンスを将来の低炭素社会建設まで見通した市民の意識変革や新たな活動参加に結実させなければなりません。

こうした観点からわかやま環境ネットワークは2013年度、以下の3つの基本方針をしっかりふまえながら、地球温暖化対策を初めとする多様な活動を強力に推進します。

  1. 国や県からの受託事業を有機的に関連づけ、夏の節電を切り口に広範な県民各層への大規模な働きかけを敢行するとともに、地球温暖化やエネルギー問題についての関心や理解の度合いに合わせて多様に応じられるメニューを組み立てて、従来よりひと回り広い人々と知り合うとともに関心の高い層を実践活動に巻き込み、わかやま環境ネットワークや地域協議会の人的繋がりと活動の質を大きく引き上げることをめざします。
  2. 個々の会員や推進員、地域協議会にとり、やりがいがあり、無理なく楽しく活動できるよう取り組み課題を整理して活動するようにします。また1人でも多くの仲間が何らかの活動に参加してもらえるよう、すべての会員、すべての推進員に漏れなく声をかけます。特に、和歌山市における活動を活性化することを重視して取り組みます。
  3. 地域社会における信望を高めることで将来の活動領域を広げるとともに、意欲ある仲間や後継者を増やすため、わかやま環境ネットワークの活動やプロフィールを伝える効果的で戦略的な広報活動を重視して取り組みます。

① 「地域での温暖化防止活動基盤形成事業」

【環境省→全国ネット→県センターへの委託事業】

  1. 温対法第24条2項各号(以下の5項目)に規定されている県センタ-の活動を日常的に展開する。
    1. 温暖化の現状や対策について啓発するとともに推進員や民間団体の活動を支援する。
    2. 温室効果ガス排出抑制等のための措置について照会及び相談に応じ助言を行う。
    3. 推進員とも協力して、日常生活に関する温室効果ガス排出実態を調査し分析する。
    4. 住民の温暖化防止活動を促進するため、適切に分析結果を提供する。
    5. 地方公共団体実行計画の達成に必要な協力をする。
  2. これらの活動を効果的かつ円滑に促進するため関係主体(設置権者、地方自治体、地域協議会等)の連絡調整をおこなう「和歌山県温暖化防止活動連絡調整会議」を設置する。
  3. 特に和歌山市在住在勤の会員や推進員の組織化を重視して取り組む。

②「地域活動支援・連携促進事業」(略称:コンソーシアム事業)

【環境省補助事業】

  1. 地域の団体とコンソーシアム(共同事業体)を作り温暖化対策を推進、連携を強化する。
    1. わかやま減電「節電所」建設プロジェクト事業
      1. 各家庭で夏期2ヶ月間の使用電力削減にチャレンジしてもらい、その結果を前年の電気使用量と比較して着払いハガキ等で集約する。
        1. 地域協議会や推進員グループ、生協組織や女性団体と共同、学校等にも働きかける。
        2. 地球温暖化対策の重要性とともに電力不足対策と電気料金値上げ対策を兼ねて訴える。
        3. すべての推進員が参加できる活動として広く展開する。
    2. 市民がすすめる木質バイオマス利用事業
      1. 木の国の再生可能エネルギーとして未利用木質バイオマスの活用を促進する。
        1. 関係の地域協議会、会員市民団体と共同、森林組合や林家、製炭業者にも働きかける。
        2. 薪ストーブやバイオマスボイラーの導入を進めて需要を増やす。
        3. ネットワークを機能させ、可能な範囲で荒れた山林整備を行い地域活性化に繋げる。

③ 家庭(うち)エコ診断事業

【環境省→全国ネット→県センターへの委託事業】

  1. (前述)専用ソフトを使ったオーダーメイドの省エネ対策づくり
    1. 協議会をつくり、協議会の構成員を対象に診断を実施。目標100件。
    2. 協議会は、わかやま減電「節電所」建設プロジェクトのコンソーシアムと兼ねる。
    3. 「節電所」プロジェクトで繋がった方のうち、関心の高い層を対象者に想定。

④ 草の根運動推進事業

【和歌山県委託事業】

  1. 地域協議会等への支援。
  2. 和歌山県温暖化対策情報誌『わおん通信』(1,500部、年4回発行)の編集。
  3. 推進員養成講座・推進員スキルアップ講座を各1回開催。

⑤ 推進員による井戸端会議促進事業

【和歌山県委託事業】

  1. 推進員が語り手になり温暖化対策をテーマとする少人数の座談会を開催。
    1. 「節電所プロジェクト」から「家庭エコ診断」への橋渡しの位置づけ。
    2. 家電買い換え比較ソフト「しんきゅうさん」など利用し、イベント会場での実施も可。
    3. 会場代、資料作成等を援助。

⑥ 地域調和型エネルギーシステム構築調査事業

【㈱石橋との共同事業】

  1. (前述)バイオマス発電&バイオコークス製造の事業化検討で結論を出す。→可能なら事業化
    1. 環境ネットは引き続き「原料調達システム」の検討を担当
    2. 秋口頃に市民参加含む7モデルほどを想定した林地残材の伐出実証をおこなう。
    3. 市民参加による持続的な森林整備の可能性を検討するため実践的な学習会を開く。

⑦ 親子体験教室実施など独自事業

  1. 「親子夏休み工作教室」「うみホタル観察会」「エコキャンドル作り」など、親子で楽しみながら温暖化対策や環境のことを学べる場を提供する。
  2. 会員団体の個性的な活動への参加などネットワークを生かした事業にとりくむ。

⑧ 理事会活動、組織の維持拡大に係る諸活動、対外活動

  1. 多様な活動と戦略的で旺盛な広報を展開してこれを組織の拡大強化に結実させ、今年度中に個人130会員(現在107)団体60会員(現在47)に到達する。
    1. 引き続き原則として2ヶ月に1回開催する理事会を中心に活動を進める。
    2. 会員の参加を得て事務局を飛躍的に強化し日常活動の多様化を図る。
      1. 再生可能エネルギー、環境教育、食と農、省エネなど専門部会の開設をめざす
    3. 取り組み課題やイベントごとに、組織の内外や影響力の大きい層に働きかける戦略的な広報活動を展開し、本会の社会的認知度を向上させ、組織拡大の条件を拡大する。
      1. 会報「うぃねっと」(年4回)発行 ・プレスリリースの恒常化 ・SNS活用
      2. ホームページ刷新とアスクセス向上対策 ・メーリングリスト活性化と登録拡大
      3. 首長や議員、地域リーダー、経営者、記者、教育者ら分配率の高い層への接触強化
    4. 「交流会」を適宜開催するなど、会員や会員団体間の関係を深める。
    5. これまで交流のなかった団体や企業などにも積極的に接触し、共同の可能性を探る。
    6. 和歌山県を代表する環境団体として、引き続き積極的に県内外の対外活動を担う。