2015年度事業方針

気候変動がもたらす地球規模の危機に人類が対処するため、今年末にフランスのパリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)で、すべての国が参加する2020年以降の温室効果ガス排出削減の枠組みが、決定されることになっています。

その議論の前提として、各国から温室効果ガス削減の自主目標提出が相次いでいますが、日本政府は このほど、2030年に2013年比で26%減という目標案を示しました。

この目標は従来の基準年だった1990年比では18%減に過ぎず、現時点ですでに90年比20%削減したうえさらに2030年に40%まで削減するEUはもちろん、京都議定書から脱走して世界から非難を浴びた米国の2030年に90年比23~27%減という目標に比べても遥かに見劣りするレベルです。

それを、過去二番目に排出量が多かった2013年に基準年を変えて大きく見せたり、先進国では新増設が禁止されつつある石炭火力の輸出を図るなど、現状では日本は残念ながら、様々な困難を乗り越えての合意をめざす世界の交渉に冷水を浴びせる役割を果たしていると評せざるを得ません。このような政府を選んでしまった日本の主権者として、私たち市民もその責任の一端をまぬかれないでしょう。

エネルギー起源のCO2排出に起因する地球温暖化も、人類に処理不能な核廃棄物も、現役世代の誤った行動が生んだ巨大な負担を将来世代にツケ回しするものであり、これらへの対処を漫然と放置することは、これから生まれくる将来世代に対する犯罪です。

政府はどうあれ、いやそんな政府を選んだ有権者であればこそなおさら、私たちは行動することで、現役世代としての責任を果敢に引き受けたいと思います。

こうした観点からわかやま環境ネットワークは2015年度、以下の三つの基本方針を踏まえながら、地球温暖化対策を初めとする多様な活動を強力に推進します。

  1. 国や県からの受託事業を、本ネットワーク定款に掲げる設立目的の達成に効果的に結びつけて展開し、地方自治体、学校、NPOや各種団体、企業、さらに環境問題に関心のある市民など、従来よりひと回り広い地域主体との間で相互理解、相互協力の連携関係を深め、活動の質と規模を大きく引き上げることをめざします。
  2. 個々の会員や推進員、地域協議会にとり、やりがいがあって知識や技能の向上など自己実現に役立ち、楽しく活動できるよう取り組み課題を整理して活動するようにします。また1人でも多くの仲間に何らかの活動に参加してもらえるよう、すべての会員、すべての推進員に漏れなく声をかけるとともに、事業や 事務局の活動などを思い切って分担してもらい、事務局の活性化と活動力の強化を図ります。
  3. 活発で誠実な活動で地域社会における信望を高める一方、わかやま環境ネットワークの活動やプロフィールを伝える効果的で戦略的な広報活動を展開し、知り合った市民や団体、企業等に積極的に働きかけて会員や推進員を増やし、活動の主体的力量を強化するとともに後継者を育て、人的財政的に組織の維持発展の基礎を固めます。

① 地域での温暖化防止活動基盤形成事業

【環境省間接補助事業】

  1. 地球温暖化対策連絡調整会議の開催と運営
  2. 日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等のための照会・相談・助言
  3. 温室効果ガスの排出実態の把握、分析
    1. わかやま「節電所」建設プロジェクトを新たな形で継続実施します
    2. 家庭の省エネに関するアンケートや冷蔵庫の使用実態に関する調査を引き続き行います
  4. 地域における地球温暖化対策の現状及び推進状況に関する啓発・広報
    1. IPCC第5次報告書や省エネをテーマとする講座や実践的なセミナーを開催します
    2. 温暖化対策の現状や対策などについて啓発ツールを作成し、各地のイベント等で活用します
    3. 推進員との連絡を密にし学習ツールや学習機会の提供等によりスキルアップを援助します
  5. 民間の団体等における地球温暖化防止活動の活動実績調査及び活動支援

② 地域活動支援連携・促進事業(コンソーシアム事業)

【環境省補助事業】

  1. わかやま版省エネ診断普及促進プロジェクト(仮称)
    1.  省エネセンターが提供する省エネ診断を、和歌山在住のエネルギー使用合理化専門員グループに依拠して土わかやま独自のスキームで広く実施します
    2. 和歌山の地域特性を活かし特に温泉旅館、また老健施設や病院など、熱利用度の高い施設を 対象に受診者を募り、CO2削減の実をあげます

③ 草の根運動推進事業

【和歌山県委託事業】

  1. 地域協議会等の草の根の活動を支援します
  2. 和歌山県温暖化対策情報誌『わおん通信』(1500部、年4回発行)を編集します
  3. 推進員養成講座&スキルアップ講座を開きます
    特に今年度は、紀州推進員の会が研修機会を兼ねて総会を開催できるよう援助します
    また、青年学生層の推進員養成に努めます

④ 省エネ啓発促進事業

【和歌山県委託事業】

  1. イベント会場で家庭におけるエネルギー消費の現状を調べ、その対策についてアドバイスを行います

⑤ カーボンオフセット普及活動

  1. 環境ネットが事務局を担う「わかやまエコリレー推進協議会」を主体に、カーボンオフセット商品の開発や普及広報を勧めます

⑥ 再生可能エネルギーの地域への普及活動

  1. 木質バイオマス発電所や、バイオガスコジェネプラントの建設、可能な範囲で再生可能エネルギーの 地域への普及に取り組みます

 ⑦ 理事会活動、組織の維持拡大にかかる諸活動・対外活動

  1. 理事会活動等
    1. 2か月に1回程度、適切な時期に開催し、活動と組織建設を強力に推進します
    2. また、非専従の会員にも加わってもらって理事会活動を支える事務局を強化します
  2. 会員拡大等
    1. 個人会員33人純増の150人、団体会員13純増の60を目標とします。
  3. 戦略的広報
    1. ≪対外広報≫ 引き続きプレスリリースを積極的に行います
      また、学校など影響の大きな所への 働きかけを重視して行ないます
    2. ≪対内広報≫ 会員拡大とあわせメーリングリストの登録を増やし発言と交流の活性化を図ります
      また、引き続き会員や推進員に対する電話連絡を積極的に行います
    3. ≪SNS等≫ ホームページを刷新するとともに、節電所の参加登録など実用性を高めページビュー の向上をはかります
      また、各種SNSも効果的に活用します
  4. 対外活動
    1. 引き続き、和歌山県を代表する環境市民団体として求められる役割を積極的に果たします。また、 地方自治体や各種団体、企業等との相互理解、相互協力の関係を強化します。わけても、私たちの活動が科学の裏付けをもって展開できるよう、また若い層の活動参加を得て組織の将来の発展が展望できるよう、和歌山大学をはじめとする教育研究機関との連携強化を特に重視して取り組みます。
    2. 京都議定書後の世界の温室効果ガス削減の枠組みを決定するCOP21が本年末、フランスのパリで開催されます。この歴史的な会議が成功にむけ、これに関連するイベントやキャンペーンに参加していきます。